【質問】
自社養成パイロット志望の22歳、女子です。
昨年10月に静脈洞血栓症を発症しました。
身体的な後遺症、高次脳機能障害もなく、予後も良好です。
現在はワーファリンを毎晩服用しています。
脳梗塞の既往歴がある場合は不適切となると航空身体マニュアルに記載がありますが、自社養成の航空身体検査でも不合格になるのでしょうか?
備考にあるように、航空業務に支障を来すおそれのある後遺症がなく経過良好で、国交大臣の判定を受けるための申請をするという条件付きで合格することは難しいでしょうか?
【回答】
静脈洞血栓症は脳梗塞に準じた扱いになり、ワーファリン内服中であれば、航空身体検査審査会(国土交通大臣判定)の対象になります。
自社養成の採用試験で合格するかは、各自社養成採用会社の判断であり、協会としては分かりません。
パイロットは、訓練を開始する前に、操縦練習許可証を得るために、航空身体検査の受診と合格が必要になります。航空身体検査の結果、既往歴や内服の状況により不適合となった場合に、審査会の対象となりますが、審査会に提出する資料等を揃える必要があります。
参考までに
国空乗第630号
1.頭部MRI 画像
原則として、次の条件を満たすこと。
(1)撮像条件は T1強調画像、T2 強調画像、FLAIR であること。
(2)スライス厚は6㎜以下であること。
磁場強度は1.5テスラ以上が望ましい。
微小出血が疑われる場合は撮像条件として T2*強調画像を併せて提出すること。
2.危険因子に関する評価(治療内容等も含む )
(1)血圧の経過及び24時間血圧測定の結果(ABPM等 )
(2)糖尿病に関し、グルコース及びHbA1Cを含む検査結果並びに臓器障害の評価。
糖尿病を認める場合は併せて血糖日内変動の結果。
(3)高脂血症に関し、総コレステロール、中性脂肪、 LDL-コレステロール及び
HDLコレステロールの実測値。
(4)動脈硬化に関し、次に掲げる項目の評価。
① 頚動脈エコー
② 腎機能検査(クレアチニンクリアランス、尿中アルブミン定量精密測定)
③ 眼底写真及びその所見
(5)ホルター心電図による評価。
(6)心肥大に関し、心臓超音波検査の評価。
(7)現病歴、身体所見、既往歴、家族歴及び喫煙歴。家族歴については、脳卒中発作
のみならず、危険因子に関する事項も報告すること。
3.認知機能に関し、6ヵ月毎の定期訓練及び審査の評価を記したもの。自家用操縦士
等でこれらの提出が困難な場合は、 MMSE(Mini-Mental State Examination)等の認知
機能検査の結果。
以上を提出して大臣判定を受ける必要があります。
また、発症後2年間を経過する必要もあります。自社養成の場合は、各社の判断によると思いますが、2024年10月発症とすると2026年10月の査会になると思います。
まずは、お近くの航空身体検査指定医を探し、現在の病態を診てもらい、将来的な予測を伺うのが宜しいかと思われます。